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月経不順、月経困難症

月経不順・無月経について

月経不順・無月経 月経不順や無月経をそのまま長く放置してしまうと、卵巣機能に悪影響を及ぼすほか、がんの発症リスクを高めてしまいます。特に、若い女性にとっては将来の妊娠が困難となってしまうことが心配です。婦人科疾患を原因として月経不順や無月経となっていることもありますが、ストレス、体重増減、睡眠時間の減少や時間帯の変化、投薬内容の変化、内科的疾患など原因は多岐にわたります。月経不順や無月経が気になる方は、一度婦人科を受診されることをお勧めしております。

月経困難症とは

月経困難症とは、月経が始まる数日前より月経の間、月経終了直後に起こる病的症状によって、日常生活を送ることが困難となる状態を言います。
原因となる疾患がある場合を、器質性月経困難症と言い、原因となる疾患がない場合を機能性月経困難症と言います。主な症状は、下腹部痛や腰痛のほか、頭痛や腹部膨満感、イライラや気分の落ち込み、疲労感、便秘、下痢などの症状が現れます。

器質性月経困難症

月経困難症の原因が、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮奇形など何らかの疾患とされる場合を器質性月経困難症と言います。

子宮筋腫

子宮筋腫は、子宮の平滑筋細胞にできる良性腫瘍です。複数個できることが多く数や大きさは様々で、小さい筋腫を含めると30歳以上では約20-30%の女性が保持しているとされています。卵巣からの女性ホルモンの影響により増大し、閉経後は小さくなっていきます。筋腫の発症部位によって、外側から漿膜下筋腫、筋層内筋腫、粘膜下筋腫に区別されます。おもな症状は、月経量が多くなることと月経痛で、その他に月経以外の出血、腰痛、頻尿(トイレが近い)などがあります。症状はできる場所と関係があります。子宮の内側にできた筋腫は小さい場合でも症状が強く、月経量が多くなります。逆に子宮の外側にできた筋腫は大きくなった場合でも症状が現れない傾向があります。そのため、治療が必要かどうかはできた場所や症状によって異なります。妊娠しにくい(不妊)、流産しやすい(習慣流産)などの症状も現れることがあります。
診断は内診と超音波検査で診断しますが、大きな筋腫や手術を考える場合にはMRI検査をすることもあります。大きな筋腫は悪性の子宮肉腫との区別が難しいことがあり(大きな筋腫の約0.5%は子宮肉腫といわれています)、MRI検査結果や大きさ、年齢、大きくなるスピードなどで判断します。小さくて、無症状の場合は治療をしなくても問題ありません。
治療法には手術と薬があります。手術では子宮を取ってしまう(子宮全摘術)のと筋腫だけ取る手術(筋腫核出術)があり、将来子供がほしい方や子宮を残す希望が強い方では筋腫だけ取る手術を実施しますが、手術の際に出血が多くなるのがデメリットです。また、直接見てもわからないような小さな筋腫が取り残される可能性があり、数年後に子宮筋腫が再発してくることもあります。最近、腹腔鏡を使って手術行う施設も増えてきましたが、大きさやできた場所によって腹腔鏡での手術が難しい筋腫もあります。
子宮筋腫を根本的に治す薬は今のところありませんが、薬で子宮筋腫を小さくする、出血や疼痛などの症状を軽くすることができます。薬の治療には、月経を止める治療(偽閉経療法)があります。この治療では更年期様の症状がでて、骨粗鬆症になるおそれがあるため長期(半年以上)の治療はできません。治療により子宮筋腫が半分近くまで小さくなりますが、治療を中止すると元の大きさに戻るのが普通です。このような理由から、薬による治療は、手術前の一時的な使用や、閉経が近い年齢の方などの一時的な治療として行われることが多いです。そのほか女性ホルモン量の少ない低用量ピルを使うことで筋腫が大きくならず症状も楽になることがあります。子宮筋腫での保険適応はありませんが、ジエノゲスト(ディナゲス○R)や子宮内黄体ホルモン放出システム(ミレーナ)にて月経量増加や月経痛を軽くすることができるため、子宮筋腫の縮小というより症状緩和でこれらの薬を使うこともあります。その他の治療法として、子宮に栄養を送る血管をつめてしまう治療法(子宮動脈塞栓術)もあります。

子宮内膜症

子宮の内側を覆う粘膜(子宮内膜)あるいはそれに似た組織が、本来あるべき子宮内側とは別の部位に発育する疾患が子宮内膜症です。20~30代女性の発症が多く、そのピークは30~34歳にあるといわれています。
骨盤内の腹膜や卵巣などにできる炎症性疾患で、女性ホルモンの影響によって月経が来る度に炎症や出血、癒着を繰り返します。痛みが主症状で、月経痛や月経時以外にも腰痛や下腹痛、排便痛、性交痛などがみられます。また、妊娠を希望する生殖年齢の女性は不妊が問題となります。
治療法は薬物療法と手術になります。薬物療法では痛みの強さに応じて、鎮痛剤や、女性ホルモンの分泌を抑えることにより直接病巣に作用させるお薬を使用したりします。卵巣の内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)などの病巣部がはっきりしている場合は、手術を検討します。不妊の有無、将来妊娠を希望するか、病巣の状態、患者様の年齢、治療歴などを考慮した上で治療法を検討します。子宮内膜症は、いずれの治療法を選択しても、将来的に再発する頻度が高いことや卵巣の子宮内膜症性嚢胞は長い年月を経ると稀にがん化すること、最近では子宮内膜症の既往歴がある方は将来の動脈硬化や心血管障害のリスクが高くなるとの報告もあり、長期にわたる経過観察が必要です。

子宮腺筋症

子宮内膜に類似した組織が子宮平滑筋組織の中に出来る疾患で、ひどい月経痛や過多月経、腹痛や腰痛などの症状を来します。女性ホルモンの影響によって大きくなりますので、月経が有る限り子宮腺筋症は進行し、子宮腺筋症の病変によりその部分の子宮筋層が厚くなったり、子宮全体が著明に肥大することもあります。子宮筋腫の合併も多いです。40歳代や経産婦、子宮内掻爬手術、帝王切開、筋腫の手術など子宮内膜の操作を伴う子宮手術を経験した人に多くみられます。手術で摘出された子宮を顕微鏡による検査(病理検査)で詳しく調べると20-60%程度に認められるとされますが、経腟超音波検査などの画像検査上で見つかることはそこまで多くはありません。不妊症や流産・早産の原因となる場合もあります。
治療法は症状に応じて、鎮痛剤や様々なホルモン剤(低用量ピル、プロゲスチン製剤、黄体ホルモン放出子宮内システム、GnRHアゴニスト、GnRHアンタゴニスト、ダナゾール)による治療を検討します。これらが無効の場合は、手術療法が考慮されます。将来の妊娠を希望している方、閉経が近い方など、患者様の年代や状態、体質によって治療方法を慎重に検討します。

機能性月経困難症

機能性月経困難症とは、月経困難症の原因に明らかな器質的疾患(子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症など)が認められない場合にいいます。原因の一つに、子宮内膜が剥がれる時に生成されるプロスタグランジンという物質が過剰に分泌していることが知られていますが、そのほかに子宮形状の個人差ですが前屈や後屈が強い、子宮口が狭い、器質的疾患のごく初期などが考えられています。

症状について

月経痛下腹部痛や腰痛、頭痛など月経に伴う痛みのため日常生活に支障があります。
腹部膨満感や下腹部の張り感、イライラ感や気分の落ち込み、疲れやすさ、頭痛、便秘、下痢などの症状を伴うことがあります。

検査・診断

まずは問診を行い、症状の内容や発症の時期などについて丁寧にお伺いします。その後、必要に応じて以下の検査を行います。

  • 内診/超音波検査
  • 血液検査
  • クラミジア抗原/抗体検査
  • 細菌培養検査
  • 子宮鏡検査 (他院依頼)
  • MRI検査・CT検査(他院依頼)
  • 子宮卵管造影検査 (他院依頼)

など

治療方法

患者様の状態と副作用などを総合的に判断して対症療法やホルモン療法、漢方薬などを検討します。
生活習慣の改善が有効なこともあり、丁寧に指導をしていきます。手術療法が必要な場合は実績のある病院をご紹介いたします。

生活習慣の改善

体を温めて代謝をよくすることは月経困難症を改善します。適度な運動を行い、骨盤周囲の血流うっ血を防ぎ筋肉量をふやすと代謝が良くなり冷えが改善します。下腹部をマッサージすることやウォーキングやジョギング、スイミングなどがお勧めです。食べ物も重要です。糖質に偏りがちな方はたんぱく質をきちんととるようになさってください。中国の医食同源の考え方では、生姜や黒い食べ物(黒豆、きくらげなど)が体を温めてくれるそうです。漢方薬は冷え改善を得意としますので、薬膳レシピも有効かもしれません。少しぬるめの湯船にゆっくり浸かること、靴下や肌着などを工夫することも冷え改善に有効です。また、十分な睡眠と休息でストレスを軽減することも大事です。タンポンの使用は経血を逆流させ子宮内膜症の原因となることが知られていますので、必要最小限の使用になさってください。

対症療法

鎮痛剤であるNSAIDsを処方し、痛みの症状を抑えます。鎮痛剤は、痛みが現れる前に飲むこと、痛みが出そうになるタイミングで飲むことで、痛みを抑える効果が抜群に上がります。NSAIDsは、痛みを起こすプロスタグランジンを抑制します。また、思春期の年頃で機能性月経困難症の方には、ブチルスコポラミン(鎮痙剤)が有効の場合があります。漢方薬も大変有効です。それぞれの患者様の証をみながら処方いたします。

ホルモン療法

ミレーナ機能性月経困難症に対しては、低用量ピルが有効なことがあります。内因性のホルモン量より少ない量を内服することで、月経痛は軽減され、月経量も少なくなります。低用量ピルを毎日内服すると排卵が抑えられ月経前緊張症が改善されます。また避妊を目的に内服されることがあります。低用量ピルには周期的投与(28日)と連続投与(120日)があり、月経困難症を主症状とする方は連続投与の方が効果的との結果が得られています。低用量ピルのエストロゲン成分が血栓症の副作用を稀に引き起こすため、血栓症のリスクが高い方には使用を控えます。40歳以上、喫煙歴あり、前兆を伴う頭痛など低用量ピルの使用が難しい方には黄体ホルモン剤単体(ミニピル)が有効な場合があります。黄体ホルモン剤には、内服薬(ジェノゲスト)や子宮内装具(ミレーナ)などがあります。処方後、副作用などを見ながら薬剤を調整するため、副作用など辛い症状が現れた場合は気軽にお伝えください。